仕事が進まず

 アポなしで来訪するのが私の友人の通例となっているらしく、今日は突然、学生時代の後輩のSちゃんがやってきた。おかげでいつも予定していた仕事が終わらないのだ。Sちゃんは、私と会う時はいつも相談事がある時と決まっており、どうせ、今日も恋愛か何かの相談だろうと思い、
「おまえ、またフラれたのか?こっちは仕事があるんだ。終わるまであっちへ行って待っていろ」と私が言うと、
「いいえ、暇つぶしで来ただけ」とSちゃんは平然とした顔つきで言う。相談事よりもっと性質が悪い。Sちゃんを無視して私がパソコンに向かっていると、
「腹へった、腹へった」とSちゃんが連呼する。
「おまえは飯を食いに来たのか?うるさいなあ。こっちは明日のご飯を食べるために必死で仕事をしているんだ。静かにその辺の本でも読んでいろよ」と私が言うと、妙におとなしくなり、本を漁り始めた。
 これはいい調子だと、仕事をしていると、そのうち、Sちゃんが大声で笑い始めた。そんなに面白い本があったのかと思い、
「うちの本でそんなに笑うような本があったかな。なんじゃいその本は?」と私が言うと、Sちゃんは、笑いを必死で堪えながら、それでも笑いが止まらないらしく、目に涙をいっぱい溜めて笑い転げている。
「おい、そんなに笑うと化粧が崩れるぞ」と私が言うと、
「だって、だって、これ・・・、アフロなんだもん」と言って開いているページを私に見せた。アフロだけでそんなに笑うものかと、そのページを覗くと、一枚の写真が挟まっていた。その写真はアフロヘアーの男が写っている。しかし、何故そこまで笑うのかと思い、写真をよく見てみると、その人物はどこかで見たことのある顔だ・・・・、あれ、これは私ではないか!
「何これ、こんな髪型していた時があったの?」と言いながらSちゃんは未だに笑っている。そういえば、昔、アフロのかつらをかぶって写真を撮ったような記憶がある。その時の写真かも知れない。
「ああ、笑いすぎて腹へった。ねえ、あたし、おいしい中華が食べたいなあ。おごってくれるよねえ。じゃないと、この写真公表しちゃうよ」とSちゃんは写真を手にとってヒラヒラさせながら言う。
「おい・・・・、それだけはやめてくれ。公表されたら、しましまブックスの信用がガタ落ちじゃないか」
「だったら、今すぐ、中華屋さんに行くことね」
 おかげで仕事を中断し、ご飯をおごることになり、今日も予定していた仕事が終わらなかった・・・・。