危機に直面する私の年代(前編)

 今年度大学卒業予定者の就職活動の感想は「楽だった」が一番多いとのことである。大企業に関しては景気の回復、また、団塊の世代の退職や今後人口減少が予測されることから、労働力の確保が必要であり、採用者数が増加したことがその原因であろう。
 私が学生の頃は、戦後二番目から三番目ぐらいの就職氷河期であり、百社受けても採用されないというようなことがしばしば見受けられた。そのため、正社員採用されず、契約社員や派遣社員などの非正社員雇用が多く、職業のスキルアップが図れず、現在も転職が困難な状況であり、そのため、収入面における社会的格差が広がっている。現在、そのことが社会問題のひとつとなっている。政府も対策を打ち出しているようだが、それに対して企業がついてこないという状況である。私達の年代はかなりの危機に直面していると言っても過言ではないだろう。
 企業の身勝手さや、政府の対応の遅さもひとつの問題ではあるが、そもそも企業とは、晴れの日に傘を貸して、雨の日に傘を貸さないものなのであり、私の年代には、その認識が大学卒業時に必要だった。それは、ここ十数年間の動向を見ていれば明らかだったのである。バブル景気の時には、固定給で給料を抑え、バブルが崩壊した途端、能力給と称して、これまた給料を抑える。そして挙句の果ては、リストラである。企業とはそういうものだとの認識が必要だったのであり、全面的に企業に信を置くわけにはいかなかったのである。気付いていなかったからこそ、百社受験しても結局は非正社員雇用という状況に甘んじ、現在の危機に直面しているのであろう。しかし、気付いていたからとて、他に選択肢があったのだろうかという疑問もある。当時気付かなかったとしても、大学卒業から現在までの間に、時代を肌で感じ、これから先の時代を予測し、どれだけのことを成してきたか、或いは考えてきたかによって、今後の人生が決まるのであろう。

 偉そうなことを言っているが、それでは一体おまえはどうなのだ?という話になるのだが、その話は次回へ続く。