親切かそうでないか

 今日は所用で東京方面へ行く用事があり、東海道線に乗っていたのだが、ご老人とその娘さんらしき人が途中駅より乗車した。座席が一人ぶん空いていたので、当然ご老人が座ったのだが、それを見ていた向い側に座っていた中年ぐらいの男性が、離れたところに一人分座席が空いているのを発見したらしく、その娘さんに向かって、「おい、あっちにもう一匹分席が空いているぞ」と言った。娘さんは無視していたが、中年男性はまた繰り返し、「おい、あっちにもう一匹分席が空いているぞ」と大きな声で言った。さすがに娘さんも反応せざるを得なくなり、「ありがとうございます」と小さな声で、神妙な顔をして言ったのだった。
 他人に向かって「一匹」とは馬鹿にしているとしか思えないのだが、空いている席を教えたのだから、親切と言えば親切である。これは解釈しようにも非常に難解な出来事である。単純に人に親切にするということが恥ずかしく、それを誤魔化すために「一匹」などと言ったのかも知れないが、常識ある大人の発する言葉とも思えない。どう見ても娘さんは立っていても平気なはずの年齢であったので、わざわざ空いている席を教えることは実は、必要ないのであって、一体何が目的であったのかイマイチ判然としないのである。ただ、それをきっかけに娘さんと喋りたかっただけなのか・・・・・。
 そのようなことを考えていたら、いつの間にか、下車駅を通過していた。