手紙

 今あなたは何をして、何を考えていますか。あれからもう随分とあなたともお会いしていませんね。私はといえば、相変わらず、貧相な古本屋を続けています。あの頃と同じで、綱渡りの生活です。
 以前はよくあなたと公園を散歩し、色々な話をして笑い合ったものでした。あなたの笑顔を見ているだけで、私にはお金も何もいりませんでした。あなたはよく笑いましたが、よく泣きもしました。その度に私は心を痛めたものでした。私があなたを泣かせてしまったのではないかと。
 そして、あなたは夢を語りました。しかし、私ではその夢は叶えてあげることができませんでした。しがない古本屋でしかないのです。今はただ、あなだが以前と変わらない笑顔で生活されていることを祈るばかりです。きっと、あなたなら大丈夫でしょう。
 もうすぐ、冬がやってきます。風邪をひかないよう、どうぞご自愛ください。きっと私は、これからも独りで古本屋を続けて行くことでしょう。