ソースかけすぎ

 久しぶりにAちゃんと食事をすることになり、Aちゃんおすすめのとんかつ屋さんでヒレカツを注文して、ヒレカツにダブダブとソースをかけていたら、
「なんでそんなにソースをかけるの!」とAちゃんは私に向かってすごい形相で一喝した。
「ふぁああ、僕はいつも何にでもソースをたくさんかけるのがクセで・・・・」と私は動揺しながら言った。
「そんなにかけたら、お肉の味がわからなくなるじゃない!」
「ふええ、僕はソースの味で何でも食べるので・・・・」
 自称食通のAちゃんは、料理の食べ方や味にとてもうるさい。これは、育ちが違うせいだろう。私のような人間は、素材の味を生かすような料理を食べたことがない。刺身はスーパーの期限切れ間近のお買い得品を買うので、素材の味どころではなく、臭みを消す為に、たくさんのわさびと醤油をつけて食べる。肉類とて何の肉だかわからない安いものを買っているので、臭みが強く、タレやソースをたくさんかけ、臭みをごまかして食べる。いわば、ソースの味で素材の悪さをごまかして食べているのである。普段から高級食材ばかりを食べているAちゃんとは、育ちが違うのだ。
「だったら、ソースだけ食べていればいいじゃない!」
「うう、そんなことを言われても・・・・」
 私は恐縮して、ヒレカツを食べていても味がよくわからなかった。味にうるさい人と食事をすると、食べにくいのも事実だが、いろいろとおいしいお店を教えてくれる。しかもそれが確実なので、参考になる。しかし、お誕生日以外は、そんないい店でご飯を食べられない私なのだが・・・・。