はじめての観戦

 自分で仕事をしていると、決まった休みというものがない。また、休んでしまうと、その分売上がなくなるので、そう容易く休むわけにもいかないという気持ちがあり、さらには、昨今の不景気で売上も厳しく、いっぺんに儲かるという仕事でもないので、一日一日の積み重ねが必要な地味にして地道な仕事なのであり、休みもとらずに仕事をしているわけだが、こう仕事ばかりしていると、ついダラダラとなりがちであり、逆に良くないような気もして、週休二日というわけにはいかないが、たまには強制的に何処かへ出かけることもしなければならない。
 私には趣味というものがなく、いざ、仕事を休んでも、特にすることがない。野球バカと言えば野球バカなのだが、昨シーズンは一試合も見に行かなかった。生まれながらに大洋ファンであり、現在の横浜ベイスターズのファンなのだが、どうも昨シーズンは見に行く気がしなかった。今年はしっかりと見に行こうと思うのだが、今はまだシーズンオフであり、見に行くこともできない。
 何かスポーツを観戦するのであれば、お手軽なものがいい。例えば、前々からチケットをがんばって予約していないと見ることができないというものは、あらかじめ仕事を休む用意をしなければならず、無理なのである。ふと、暇になった時に、身軽に行けるものがいい。特に私は気まぐれなので、数ヶ月前にチケットを予約していたとしても、いざ、試合が近づくにしたがって、急に興味が失せて見に行く気がしなくなってしまう可能性がある・・・・。
 このような長い前書きになったのも、つい先日の日曜日、ふと暇になってしまい(どうしたわけか、今月はあまり本が売れんとです・・・・、否、一年中この業界は不景気)当日でも見に行けるもの、しかも、なるべく飽きずに観戦できるものがないかな、と思案していたところ、たまたま見つけた、見つけた、Vリーグ、女子プレミアリーグが川崎のとどろきで試合をするではないですか! しかも2試合もあるではないですか! NECと東レ、久光製薬と岡山の試合。これは素敵かも知れない! だって、テレビで見たことのある選手、木村とか高橋とか佐野が見れるとです。ミーハーかも知れないがいいのです。
 けれども一人で行くのは、やはり淋しい。暇そうなお方に片っ端から誘いを入れたが、皆、バレーボールには興味がないとのことで、「興味の無いスポーツを数時間観戦することほど、退屈なことはない」と断られてしまった。この私とて、バレーボールのルールすら正確には知らない。野球以外のスポーツはほとんど観戦したことがない。けれども、見に行って面白ければ、休日の過ごし方のバリエーションが増えるではないか。一度見に行ってから、判断すればいいではないか。ライブはテレビとは違うぞ。と説得したものの、やはり誰も首を縦に振るものはいなかった。
 断られるほど、逆に行きたくなるのが、世の中の常というものである。こういう時は、最後にして最強の切り札、村川君。彼もかなり渋っていたが、強制召集していざ出陣。会場に入る前に、チケットを買わなければならぬ。こういう場合、出場チームの社員や取引先の人などは、招待券貰えるんだろうな、羨ましいな、と思う。こんなチンケな古本屋では、当然取引などなく、招待券など貰えない。今度、東レのマットでもレンタルしようかしら。
 さて、どうせ見るならば、ケチな古本屋といえどもやはりいい席で見たい。もしかしたら、生涯のうち最初で最後のVリーグ観戦になるかも知れない。それならば、いい席がいい。お財布の中を見つめる私。冷や汗が吹き出る。このお札を使ってしまえば、来週からは相当厳しい食生活となることは間違いない。けれども、せっかくの機会、いい席で見てみたい。男しましまブックス、S席券三千五百円を二枚購入、合計七千円也。
 結果、やはり高いお金を払ってでも、S席で正解。迫力が違う。選手の表情がわかる。声も聞こえる。そして、意外と試合が面白い。これは、S席三千五百円は安いのかも知れない。初めての観戦だったが、行って正解。野球もいいけど、他のスポーツも意外と面白い。次も機会があったら、足を運んでみたい。けれども、その前に市場に行って本を売って、チケット代をつくらなければ・・・・・。