本の圧力と微笑み

 お客さんが来店されると、古本を買いに来たのか、コーヒーを飲みに来たのか、はたまたお酒を飲みに来たのか、ただ見学(見学だけでも大歓迎ですよ)だけしに来たのか、ある程度の予見が必要である。特にしましまブックスのような、古本の売買とコーヒーなどの喫茶、さらにはお酒が飲めるBARという複合商売の場合は、尚更である。何故なら、お客さんの目的や好みによって、対応しなければならないからである。本を探したい人は、あまり声を掛けられたくない、ほっとかれたいという方が多く、逆にコーヒーなどを飲みに来た人には、席を勧めなければならない。人を外見で判断してはならないが、逆に、外見というか、その人の醸し出す雰囲気である程度判断できなければ、客商売のプロとも言えないし、経営者としていかがだとも思う。いかなる場合においても、瞬時に判断を下さなければならないのが、経営者である。
 また、場とサービスに合った客層というものがあって、自然と同じ傾向や雰囲気のお客さんばかりになってしまう。だから、大体このお客さんは買っていくな、とか、このお客さんは、見学だけだな、とかが予見できてしまう。
 そして、しましまブックスは小難しい本が多く並べられており、一度お越しいただければわかるのだが、本による無言の圧力が非常に強い。これは、なかなか文章では表現できないのだが、本が圧力をかけてくるのである。これには困ったものだと、実は、私は思っており、お客さんが本の圧力に負けて帰ってしまうことがあるのだ。喫茶やBARだけのご利用目的で入店(これはあくまでも私の予見だが)されても、直ぐに帰ってしまう例がある。逆に、少しいい面もあって、しましまブックスは、上品な大人のお店にしたいと思っているので、(自分のことは棚に上げて・・・)そうではない方は、やはり本の圧力で直ぐに店を出てしまう。結構こういったケースはあって、店に入ってから、本当に数十秒で帰ってしまうのだ。そのぐらい、本の圧力は恐ろしいのである。
 この扱い難い本たちも、微笑むことがある。これがとても不思議で、本に微笑まれたお客さんは、「本当にいいお店ですね」とか、「こんなお店が近所にあるなんて知りませんでした。今度、女房も連れて参ります」とか、「皆さん、こういうお店に憧れるのでしょうなあ」とか私に言ってくださり、感動なさっているようなのだ。そして、一度本に微笑まれると、極少数なのだが、三日ぐらい連続で来店される方や、週に三、四回は来店される方もいらっしゃるのである。しかも、近所からではなく、遠方から来店されるケースもあるのだ。
 この日記を読まれた貴方は、必ず、本に微笑まれることでしょう。これを読んでくださったこと自体が、既に貴方は本に微笑まれています。そして、しましまブックスへお越しくださり、本に微笑を返してください。貴方は幸福になれるはずです、きっと。しましまブックスはそんな素敵な時間が流れています・・・・。