一息つく時間

 今年の夏は百十三年間で一番暑い夏だそうだ。そして、「暑い」という言葉を何回言っただろうか。「暑い」という言葉を言った回数も、おそらく一番ではないのだろうか。
 少し前までは、「夕涼み」という言葉もあった。昼間に汗をかいても、夕方から夜にかけて、ひと風呂浴び、そして縁側に座って、そよそよと吹く夜風で涼む。風鈴の音もあるといい。蚊取線香の香りも懐かしい。そんなホッと一息つく夕涼みの時間も、この猛暑では無くなってしまった。
 転じて世の中をみれば、円高で株安。出口の見えない不景気。未だに高い失業率と就職難。そして、食物の不作。政治の不安。そのような最中に、煙草の値上げ。一生懸命汗をかいて働いても、ホッと一息つく時間も余裕も昨今は無くなってしまった。せめて、庶民の楽しみ、煙草ぐらいは取り上げないでほしい。