車伝いの質問

 本当は朝の8時には起床しようと心に決めていたのだが、気づいたら既に9時をまわっていた。慌てて、神奈川の古書会館へ車を走らせる。今日は最低落札価格が普段より高い市の日だ。途中、信号待ちをしていると、隣の車線に止まっていた車のおにいちゃんが、なにやらこちらに向かって叫んでいる。こういう時は、ライトがつけっぱなしか、荷台のドアが開いたままでいるなど、親切に指摘してくださる時が多い。慌てて家を出たため、何かあったかな?と思い、窓を開けると、そのおにいちゃんは大声で、「おい、横浜の街はどっちだ?」と叫んでいる。その態度と口ぶりが、人にものを尋ねるときの態度ではなく、とても大柄なのだ。道を知りたいのならどこかのコンビニにでも寄って地図を見ればいいではないか。しかも車伝いで・・・・。なにもかもが非常識で腹立たしいのだ。
 私は一瞬考えた。何故なら、今現在の地点が横浜市内であり、横浜の街なのだ。おそらくは、横浜駅を目指しているのかも知れないが、それにしては、舌足らずな質問だ。仮にそうだとして、一言で道順を説明できるほど道は単純ではない。
 私は一言、「あっち」と、横浜駅方面と逆の方向を教え、ひとりほくそ笑みながら車を発進させた。