贅沢な時間

 一人でカフェに入り、ブラジルを注文して、本を読む。そんな贅沢な時間を過ごしてみたいと思い、先日、本を一冊片手にカフェへ行ってみようと思ったのだが、私の住んでいる街には、そんな贅沢な気持ちにさせてくれるカフェが、私が知らないだけかも知れないが、ない。風景もごく普通のベッドタウン。仕方なく、大手のチェーン店へ入る。
 欧州へ留学に行った友人が言うには、外国のカフェは一人で本などを読む人がほとんどだとか。なんて素晴らしい光景だろう。そして、我が日本の大手カフェは・・・・、ダメだ。おばさん連中のしゃべり声はうるさいし、学生グループの声もうるさい。日本のカフェは、一人で過ごす空間ではなく、駄弁りの空間と化してしまっている。気分ぶち壊し。早々に退散。
 うむむ。こうなれば、意地でも贅沢な時間をすごしてやると闘志を燃やし、次なる作戦は、自然がたくさん残っている公園へ。木陰のベンチに座り、本を読む。よし、いい感じだ。軽井沢の高原までとは言わないが、少しは近い雰囲気。さて、次のページをめくった瞬間、私の顔の横をサッカーボールが通過して行った。それとともに、子供たちの黄色い声。ああ、子供たちが遊びにやってきてしまった。またダメだ。退散。
 やはり、近所で贅沢な時間を過ごそうと思ったことが間違いだったようだ。ある程度、洒落た街まで足を運ばないとダメなのだろう。気軽に贅沢などないのかも知れないし、気軽だったら、贅沢と言わないのかも知れない。