恥ずかしいことばかり

 事業用以外に個人的に使用するために銀行口座を新たにひとつ開設しようと思い、手続きをしたのだが、書類に職業とおおよその年収を書く欄があり、たかだが口座を開くために年収まで書かねばならぬとは、これ如何に。職業は古物商と記入できても年収はとても恥ずかしくて書けるような額ではない。「年収のところ、古書数千冊とモノで記載してもいいのですか?」とおそるおそる窓口のおねえさんに尋ねると、「おっ、おおよそでいいので、年収を金額で記入してください」と明らかに不審者を見るような眼で言われた。古本屋をしていると、増えるのはお金ではなくて、本ばかりなのである。
 最初に口座へ預けておく金額がこれまたとっても恥ずかしい。単純に事業用と個人用の口座を分けるためにつくるのであって、預けるようなお金など持ってきていないし、そのようなお金などない。仕方なく、一円玉ひとつを窓口のおねえさんに渡した。いい歳をして、なんとお恥ずかしいことよ。今年はダンディーな大人の男になろうと思っていたのだが、どうも無理なようである。