そういえば、思っていた

 連日、騒がれている世界的な金融システムの崩壊。この日記を読んで下さっていた方は、大して驚かないであろうし、既に対策を練っていたことであろうから、何も心配はしていない。何故なら、私は昨年の6月14日のこの日記で、「もうすぐ世界的なバブル崩壊が起こる。これは時間の問題である」と書いた。そして、昨年の8月18日の日記には、「恐慌は始まっている」というタイトルで、ハイパーインフレになることや、このサブプライムをきっかけにして過去に例のない速いスピードで、私達の生活に襲い掛かってくることを書いた。既に1年も前から警告していたのである。(たかだか、ケチな古本屋の書くふざけた日記を本気で読んでいる人はいないと思うけど)
 また、時代の直中に生きている人間には、感性の鋭い芸術家などの人間以外、なかなか時代の雰囲気や流れを感じられないものだということも、いつの日記だか忘れたが、書いている。それでも、不安を感じたり、何かおかしい、と思っていた人も多いと思う。そして、ここまで事が進み、流石に街が、否、世界が騒ぎ始めた。そう、我々は後世、教科書に載るような、歴史的な瞬間に今、立ち会っているのである。そのことを十分に認識したうえで、今後、行動をした方がいい。嵐が去った後に、また同じような嵐の来る前の世界があると思ってはいけない。だから、日本の金融機関が、米国の金融機関を買収したりするのは、損失を増やすだけで、間違った選択である。
 さて、今から5、6年ぐらい前に、米国へ留学した友人から、報告があって、それは今でも覚えているのだが、「米国の景気はすこぶるやばく、今後、世界恐慌が起こる可能性が高い」とのことであった。この報告は、金融や経済の情報に基づくものではなく、友人が留学中に見聞した直感的な感想であった。
 その頃は未曾有の就職氷河期であり、さらには、企業は簡単に従業員をリストラクチャリングし、悪しき制度であることは間違いのない能力給を採用したり、また、派遣や契約社員の問題が徐々に表面化してきた時代であった。一方では、一部のお金持ちや成金が、ITバブルで踊ったりしていた時でもあり、負け組み、勝ち組などという言葉が使われ始めたのもこのころであったと思う。そのような状況下で、私も薄々、このようなおかしな時代がいつまでも続くわけがない、と感じていたのである。そして、米国からの報告である。
 今後生きていく為に、私はあらゆるオプションを考えたのだが、最良のオプションは農業に従事することであった。これは、世界恐慌や食料不足には、一番強いオプションと考えられた。実際に農業に従事している友人知人、地方の役場などに問い合わせなどをしたところ、自分の土地を持ち、トラクターなどを購入する資金がないと大変に厳しく、借金で農業を行ってはならない、とのことであった。何も資金がない私は直ぐに断念し、次なるオプションを考えざるをえなかった。
 次なるオプションは、簡単に従業員をリストラクチャリングするような企業を頼ってはいけない、(その前に、企業は私を雇ってくれないに決まっている)とにかく自分で起業するしかないということであった。しかしながら、私には資本が無く、技術もない。それに、実際に企業で働いてもいないのに、机上の空論で、今の企業のことを、ああだ、こうだと言うこともおかしなことではないか。やはり、一度は身体で感じるしかない。
 そのようなことで、結局私は、就職活動に苦労しながらも、小さな企業に就職した。そこは、予想以上に悪い、悪すぎる労働環境であり、否応なしで、これは、自分で起業するしか生きる道はないとさらに強く思わされることになったのである。
 そして、結局古本屋になってしまった。著しく市場規模が縮小して、小さな古本屋は店をたたむところが多い、いわば、壊滅も間近かも知れない古本屋である。それでも、一応は、なんとか運営してきたので、まずまずというところかしら・・・・・。 長くなったが、5、6年前から、なんとなく今のような世界恐慌が来るのではないか、少なくとも、このような歪な時代がいつまでも続くわけがないと思いながらここまでやってきたのである。
 日本の金融機関の損失が表に出てくるのはこれからであろう。今年中か、3月決算が出揃うゴールデンウィーク後ぐらいかも知れない。私たちの生活は、これから、さらに厳しい局面を迎える。そして、嵐の去った後は、まったく違う世界が待っている。その世界へ向けて、とにかく歩まなければならない。