妖怪? に出会う
仕事からの帰り道、妙に蒸し暑く、風もない。時は既に深夜。道には、私以外、一人も歩いていない。等間隔で道に置かれた街灯だけが、頼りである。こんな時は、自然に早足になってしまう。目の前の街路樹の影が、突然、人の姿に見えたり、耳元を通り過ぎる虫の羽の音に驚いてみたり、不気味な帰り道なのである。
突然、足元に妙な感触があったかと思うと、ざわざわと私の足元にまとわりつく影がある。それは、私の足元を中心にくるくると回り、時折、股の間を通ろうとする。私は、恐怖のあまり、立ちすくんでしまう。
「おお、人の心を惑わす妖怪よ。その真は、我が心の惑いなり」と、恐怖を吹き飛ばすために心の中で祈って、自分の足元を見てみると、黒く小さな胴体と頭。そして、四本足。『妖怪 すねこすり』か『単なる小型の犬』あるいは『単なる黒猫』か、私にはわからない。
妖怪なら妖怪で、妖怪の怖さがあり、犬なら犬で、噛み付かれやしないかという恐怖があって、どちらにしても怖い。猫ならば、一番安心である。それが、相変わらず、私の足にまとわりついているのである。
勇気を振り絞って、歩き出すと、『そいつ』は、私の数メートル先を歩き出し、そこで、私を待っている。そして、私が近づくと、また、数メートル先を歩いて、そこで、私を待っているのである。私の帰り道を知っているのか、必ず私の行こうとする方向の数メートル先を、『そいつ』は歩いて、私を待っているのである。
そんなことを数分間繰り返しているうちに、私の家へ向かう最後の分かれ道、ここで、右へ曲がれば私の家へと辿り着くのだが、そこで、『そいつ』は左へ曲がったのである。安堵したものの、私は頭の中で、考える。
―実は、『そいつ』は、私を道案内しているのではないか。『そいつ』の行く方角へ従って歩けば、宝があるとか、大金が落ちているとか、思いもよらぬ幸運が待ち受けているのではないか―。
しかし、また、私は考える。
―こんな深夜だ。わけのわからぬことでフラフラ歩いていると、不審者と勘違いされて、通報されてしまうかも知れないな。それもそれで、恥ずかしい。その言い訳は、妖怪に導かれました・・・・、では、おかしい奴だと思われてしまう―。
結局、私は安全策をとって、家へと帰る道を選択したのであった。もし、『そいつ』の行く方向へ私も行ったならば、何が待ち受けていたか、それは、誰にもわからない。
突然、足元に妙な感触があったかと思うと、ざわざわと私の足元にまとわりつく影がある。それは、私の足元を中心にくるくると回り、時折、股の間を通ろうとする。私は、恐怖のあまり、立ちすくんでしまう。
「おお、人の心を惑わす妖怪よ。その真は、我が心の惑いなり」と、恐怖を吹き飛ばすために心の中で祈って、自分の足元を見てみると、黒く小さな胴体と頭。そして、四本足。『妖怪 すねこすり』か『単なる小型の犬』あるいは『単なる黒猫』か、私にはわからない。
妖怪なら妖怪で、妖怪の怖さがあり、犬なら犬で、噛み付かれやしないかという恐怖があって、どちらにしても怖い。猫ならば、一番安心である。それが、相変わらず、私の足にまとわりついているのである。
勇気を振り絞って、歩き出すと、『そいつ』は、私の数メートル先を歩き出し、そこで、私を待っている。そして、私が近づくと、また、数メートル先を歩いて、そこで、私を待っているのである。私の帰り道を知っているのか、必ず私の行こうとする方向の数メートル先を、『そいつ』は歩いて、私を待っているのである。
そんなことを数分間繰り返しているうちに、私の家へ向かう最後の分かれ道、ここで、右へ曲がれば私の家へと辿り着くのだが、そこで、『そいつ』は左へ曲がったのである。安堵したものの、私は頭の中で、考える。
―実は、『そいつ』は、私を道案内しているのではないか。『そいつ』の行く方角へ従って歩けば、宝があるとか、大金が落ちているとか、思いもよらぬ幸運が待ち受けているのではないか―。
しかし、また、私は考える。
―こんな深夜だ。わけのわからぬことでフラフラ歩いていると、不審者と勘違いされて、通報されてしまうかも知れないな。それもそれで、恥ずかしい。その言い訳は、妖怪に導かれました・・・・、では、おかしい奴だと思われてしまう―。
結局、私は安全策をとって、家へと帰る道を選択したのであった。もし、『そいつ』の行く方向へ私も行ったならば、何が待ち受けていたか、それは、誰にもわからない。