一味違った夏休み

 大体、夏休みの過ごし方は、どれもこれも似たり寄ったりで面白くもないが、少し違った過ごし方をする人もいる。
 昨日のことである。店にM君がやって来た。
「ほう、珍しいじゃないか」と私が言うと、
「いえ、ちょっと一週間ばかり連絡が取れなくなるもので、心配を掛けてはなるまいと・・・・」と、しましま特製のアイスコーヒーを飲みながら、珍しく殊勝なことをM君は言った。
「ほほう、ということは、海外へでも行くのかね。そうか、餞別を貰いに来たというわけか!なんて、セコイ奴だ」
「いえ、違うんです・・・・。外泊は外泊なのですが、一週間ばかり入院するものでして」
「なにっ、そんなに病状が進行していたのか。もう、これで会えるのも最後というわけか。ナンマイダ、ナンマイダ・・・・、ところで、何の病気?」
「なんて縁起でもないことを言うのですか。口の中にポリープらしきものができて、それを切除するのです。精密検査の結果、癌でもないようだし。一応、神経が近くにあるので全身麻酔での手術らしいのです。術後の検査がわかるまで、一週間は入院しろと医者が言うものですから」
「ほほほう、三食付いて、麻酔の昼寝付きか。悪くないな。ちょっとした旅行みたいなものじゃない。俺がお見舞いに行ってやろう。ちゃんと素敵なナースを紹介するんだぞ」
「遊びじゃありません、遊びじゃ!」
 このように、一味違った夏休みを過ごす人も存在するのである。