四月

 四月。入社式や入学式が催される。そこに参加する彼等彼女等へ、「おめでとう」という言葉を贈っていいものか、いつも戸惑う。本当にめでたいのだろうか、と。
 私の場合、入学式のことなどは、ほとんど記憶がない。別に嬉しくもなかった。ああ、止めた。こんなことを書いても夢がない。
 今年も我が社は、新入社員ゼロ。ゼロ採用。四月といえども変化なし。さらには、決算月が三月ではないので、期が新しくなったわけでもない。せめて花見でもと思うけれど、こういう時に限って催事があり、それも叶わない。ああ、また夢がない。
 それでも、四月。世間では新しいことの始まり。新しい発見があり、新しい出会いがあり、新しいことへの希望があるはず。古いものばかり扱っている商売だから、新しいものを忘れてしまった。