身元保証人依頼

 そういえば、友人から電話があったよ。その友人は長いこと米国で働き、最近帰国して日本で働いている友人でね、何の用件かと思っていると、私に身元保証人になってほしいとのことなんだ。借金の保証人だけは御免だと言うと、そうではないと言う。友人は、米国籍を取得する予定で、米国籍になってしまったら、今度は日本で働くために、就労ビザを取得しなければならず、そのための身元保証人であると言うんだよ。
 しかし、祖国を捨て、米国籍を取得しようとは、なんというふとどき者なのだろう。大体、米国のどこに魅力があるのだろう。もはや経済は与太ってボロボロだよ。しかも、世界のジャイアンだよ、米国は。他国に自分の価値観を押し付けてこれぞ正義と威張ってやがる。これほど傍迷惑なことはないよ。世界情勢を少し鑑みればわかるだろう。もうすぐ世界における米国支配は終わるよ。どうせ今度の戦争(三月か四月に開戦するという噂がある。戦争が起こらないことを祈るけど)では米国はイランに勝てないさ。それに、ボーダーレスという言葉が一時期もてはやされたけど、そんなものいかに嘘っぱちな言葉だって、よくわかっただろう。二十世紀、世界はマス・ゲームの時代だったけど、二十一世紀になったら、今度はアイデンティティー・ゲームだよ。だからね、国家としてのアイデンティティーを強固なものにしようと、各国躍起になっているだろう。自分はボーダーレスな人間ですって言ったって、世界の人々はね、コイツは日本人だとしか見てくれないよ。
 日本だってロクなもんじゃないけど、米国よりは少しは救いようがあると思うんだ。国民性とかはまだ少しはまともだよ。地震が起きたって、略奪とかは起こらないだろ。だからね、日本国籍のままでいろって、友人に言ったよ。けれど、両親が米国に住んでいるとかの諸事情があって、どうしても米国籍を取るって言うんで、それ以上は止めなかったよ。今度の戦争が始まったら、世界は混乱するだろう。その時は友人が無事で生きていることを祈るだけだよ。まあ、日本で働いているうちは安全だろうけどね。