総個人事業時代

 私は大学院を修了した後に、一度サラリーマンとなり、そしてインターネット販売専門の古本屋をはじめたのだが、私のまわりの友人(昭和五十年〜五十五年生まれの友人)たちは今、自分の仕事について、そしてこれから先の将来について悩んでいる人が大半である。今はサラリーマンと言えども安定して働ける保証は何もなく、ヘタをすればリストラの対象となってしまうし、ある友人の会社では、給料が一律15パーセントカットされたそうなのである。
 そのような状況の中では、サラリーマンを続ける意味も目的も見出せず、それなら会社を辞めて何か自分の好きなことで生活して行きたいと思っているが、しかしながら、何を行うべきか具体的には自分ではわからないし、また、会社を辞めて一歩踏み出す勇気もない。さて、どうしよう・・・・。という友人がほとんどなのである。
 そして、私のところへやって来る友人は、「古本屋はどうなのだ?」と質問してくるが、「古本屋ほど、手間がかかって、儲からない商売はないよ。俺は本が好きで、本に触っていられる喜びがあるから続けて行くことができるだけだよ。君のような本が好きでもない人間は他の商売を考えた方がいい。それに自営業はいつも生活への不安が付き纏うぞ」とお答えしている。
 実際古本屋とは、手間がかかって、本当に儲からない商売なのであり、本が好きだから、その一点だけで私は営業しているのである。最近はようやく、しましまブックスもぼちぼち本が売れるようになってきたが、油断はできず、日々努力を重ねて行くしかないのである。
 私のことはさておき、友人たちの大半は、会社を辞めて自分で何かをやりたがっているのであり、これは、私のまわりの友人たちだけではなく、現代の若者の大半が思っていることであろう。近い将来、総個人事業時代がやってくるのではないかと思われるのである。