タイでの会話

 ちょうどタイに滞在していた時に、サッカーのワールドカップ、日本対オーストラリアの試合が行われた。タイの人もサッカーは好きでよく見るらしくて、私が日本人とわかると、必ず英語か又は片言の日本語でサッカーの話題をふられた。ひとりの方が言うには、タイのほとんどの人は日本を応援していたと言っていた。真意の程は定かではないが、そうであればとても嬉しい話である。そして、必ず「ナカタ」「ナカムラ」の名前が出てくるのだが、それ以外の名前が出てこないのが不思議であった。せめて「ヤナギサワ」ぐらいは言ってほしかったのであるが。やはり、まだまだ日本サッカーは知られていないということなのだろうか。
 そして、タイ国王の在位60周年記念の式典も行われており、世界から王族などの来賓が列席していた。我が日本からも天皇皇后両陛下が列席しており、一日中タイのテレビは、記念式典の中継をしていた。テレビのあるレストランで食事をしながらその中継を見ていると、天皇皇后両陛下のお姿が映し出されて、レストランの人からは、「日本のキングも来ているぞ」と声をかけられた。ホテルのフロントの人からも同じような事を言われた。サッカーの話題よりも、こちらの話題の方が多かった程である。また、ある人からは「あなたは、キングのジュニアか?」と言われ、「とんでもないことです。そのような貴いお方とは身分が違います。私は身分の低い古本屋なのです」と言って即座に否定したのだが、外国の方から見れば、日本人は皆同じように見えるのだろうか。それともジョークだったのだろうか。
 タイ滞在中はこのふたつの話題に集中したのであるが、共通の話題があるということは、文化の違う人間同士にとっては、とてもありがたいことであり、その為に今回のタイでは意外と会話がスムーズに運んだのであった。