勧誘の是非

 自営業をしているとすぐに儲け話に乗ってくると勘違いしている人間がいて、数年ぶりに知人から電話があったと思えば、ねずみ講と言った方がいいのかネットワークビジネスと呼んだ方がいいのか、そういった類の誘いであったりして、辟易してしまうことが多々ある。酒場でたまたま隣り合った美人と話していると、いつの間にかこれまた怪しいビジネスの話だったりで、困惑してしまうことがある。それから、最近流行りだかなんだがわからないFX取引の誘いや先物取引の誘いなどの電話やメールが来ることがある。これが、最近めっきり会わなくなってしまったが、その昔は親しくしていた人からだったりして、いくら儲かるかを真剣に話しているので、呆れ果ててしまう。紹介料でも貰えるのだろうか。しかしまあ、ケチな古本屋によくもこんなにお誘いがくるものかと、あらためて驚いてしまう。
 ねずみ講とか、ネットワークビジネスなんていうものは、冷静に分析すれば、最初の親しか儲からないシステムであるのは明らかであって、自営業をしている人間を誘うのは、おそらくターゲットが間違っていると思う。少しでも商売をしている人間ならば、モノを売る場合は、他所から仕入れるよりも、自前で生産して、自前で流通させ、自前で販売するSPAの方が高い利益を生むことは承知のはずで、まず手は出さない。
 FXや先物取引、株式も本来は貧乏人が手を出すものではない。金融などという言葉は格好が良いかも知れないが、所詮は詐欺だということを覚悟しておかなければならない。本来の投資の目的を忘れて、単に利潤の追求だけを目的として、株を買ったりしている個人が大半であろう。
 こういった愚かしいことに、相手を巻き込むのは罪悪である。また、愚かしいことと認識していない人も多く、愚かしいことと認識していないこと自体罪悪である。だから、そういう話を持ちかけた相手には、私はいつもこう言っている。その言葉を記して今日は終えたい。
 「お金が欲しいならば、働きなさい。まずは、自分の会社で今以上に働きなさい。それでも、上司や会社が認めてくれない場合は、会社を辞めなくてもいいから、小さな事業を自分で始めなさい。先物取引や株式投資は、失敗したら何も残りません。しかし、会社での仕事や自分で始めた事業は、仮に失敗しても必ず残るものがあります。パソコンの前で一日中株の売買をしているのとは違い、自分で仕事をしていると、必ず人との出会いがあります。出会いとは、人生にとってかけがえのないものです。決してお金では買えません。それだけで、十分な財産です。だから、どんな出会いでも蔑ろにしてはいけません。私は今、自営業をしています。儲からずに昔と変わらぬ貧乏暮らしですが、この仕事を始めて、色々な人と出会いました。皆素敵な方ばかりです。私にとって、唯一の財産です。だから、もうこのような勧誘を行うのはおよしなさい。出会った友人をあなたは失うことになります。人を、出会いをもっと大切にしなさい」