靴裏のゴム

 先日、雪が降った日のことである。天気予報で、夜頃から雪が降ると予め情報を得ていた私は、下駄箱から雪対策のための靴を引っ張り出して、靴裏のゴムを確認。いつ買ったのかも覚えていない、おそらくは十年前のものかも知れない靴だったが、案外滑り止めがしっかりとしていそうであった。これなら、帰り道にスッテンコロリン転ぶことはなさそうであった。
 そして、その日の仕事からの帰り道、やはり外は雪。しかも道路に雪が積もっていた。さすが私、準備万端、用意がいい、と悦に入っていると、靴底からなにやら冷たい感触がジワジワと上がってきて、靴を見てみると、靴裏のゴムがボロボロと剥がれ落ちていく。どうやら、ゴムが劣化していたようなのであった。数歩あるくと、靴裏のゴムは全て剥がれ落ち、ほぼ裸足で歩いているのと変わらない有様になってしまった。雪の上を裸足同然で歩く辛さと、滑稽さ。歩く度に自分が惨めに思えてきて、必死で冷たさと涙を堪えながら、二十分以上も雪の上を歩いて家まで帰ったのであった。