男二人で酒を呑む

 先日、M君と横浜で会った。この御仁は写真関係を専門に勉強していたのだが、写真集などの古本は一切私に売ってくれないのである。そして、私と同じく旗本退屈男である。
 男二人が横浜で行うことなど何もない。M君も私と同じく財政状況があまりよくないのであり、類は友を呼ぶとは本当なのである。
 一体どうしたものかと思案していると、M君が立ち呑み屋で一杯呑もうと提案した。これはまさしく、男の呑みである。立ち呑み屋は値段が安く、我々に丁度よいのである。私の場合、立ち呑み屋で呑む場合は、必ず日本酒を呑む。立ち呑み屋の雰囲気がそうさせるのである。M君は酎ハイである。そして、酒の肴は煮込みである。これは、どろどろに煮込まれていて、何が入っているのか判別がつかない。ミステリアスな一品なのである。
 一杯呑もうと言って、一杯で終わったことはまずないのであるが、何杯呑んだか忘れてしまった。私は酒は呑むが、酒に強い方ではないのである。そしてケチな男二人が酒を呑みながら、何を話したかも、忘れてしまった。財布の中が空になったから呑むのをやめたような気がする。嫌だねえ、本当に。