働くスタイル

今年一年は経済至上主義が吹き荒れた一年であったように思う。IT企業や投資ファンドのトップの逮捕や粉飾決済の発覚など、いたる所でそれが蔓延し、また、欠陥が露呈した。そして最近は、ホワイトカラーエグゼンプションを厚生労働省が認可する方向であるらしく、この制度は、賃金を成果方式にして、残業代を出さないとするものであり、目標さえ達成すれば、時間を自由に使えて、早く帰宅することも可能とするものである。しかしながら、仕事とは本来エンドレスなものであり、望めば際限のないものである。ひとつ終われば、またひとつ仕事ができるわけで、結局は労働者が会社に都合よく使われるだけのような気がしてならない。そして最悪起こりうることは、成果をごまかすために、粉飾決済などがまた頻繁に行われるようになることである。そのような結果になれば、現在でも政治、経済において世界から信用を失いつつある日本が、さらに信用されなくなることは間違いないであろう。
資本家でもない我々がそのような時代を生き抜くには、自分に適合した働くスタイルというものを見つけ、それに基づいた労働を行うべきなのであろう。会社組織の方が働きやすい人間ならば、会社組織で働けばよいし、会社組織が馴染まない人間ならば、独立して個人事業を営めばよい。また、ホワイトカラーエグゼンプションの制度が自分に適合すると思えば、その制度の下で働けばよいのである。
しかしながら、この、自分に適合したスタイルに基づいて労働するとういうことは、ある程度の選択肢があってはじめて成立するものなのであり、現在の日本は、選択の余地がない社会となってしまっている。ある程度歳を過ぎたら、転職することすら難しく、若い人間でさえ、本当に希望する職につける人間は一体何人いるのであろうか。そのような状況下でホワイトカラーエグゼンプションなどの制度を導入することは、時期尚早な気がしてならない。受け皿や選択肢を増やすことが先に成すべきことなのではないのだろうか。
私の話になるのだが、私は既に自分のスタイルというものを見つけ、さっさと会社を辞めて、貧しいながらもこのしましまブックスを営んでいる。一度は会社員になり、そこで管理職も経験して、ようやく自分の働くスタイル、自分の体質に合うスタイルというものを見つけたのである。今、自分のスタイルが、そして何をやってよいのかわからない若い人は、とりあえず色々試してみることだ。リスクを恐れずに、そして無駄だと思われるようなことでも積極的に参画してみる。そのうち、必ず自分の働くスタイルというものが見つかるはずであり、自ずと方向性が見えてくるはずなのである。