携帯セドラー発見

 昨日、夜になって隣町にある百円ショップダイソーへ行く。ここのダイソーは駐車場が広く、尚且つ、無料で駐車できるので助かっている。ちなみに、我が街にあるダイソーは、長崎屋の中にあり、千円以上買い物しないと、駐車代をとられてしまうのである。しがない古本屋しましまブックスにとって、一度に千円も買い物をすることなどできない。百円ショップで千円もの買い物をすることなど、とんでもない贅沢なのである。
 ダイソーでちょこまかと文房具を購入。そして、ダイソーと同じビルにはブックオフが入っているので、覗いてみる。ここ最近、しましまブックスは、お客様からの買取のみに仕入れを頼っていたのであり、久々のブックオフである。どうやら、最近は二十二時まで営業をしているらしいのであるが、客足は疎らであった。入っているお客の人数のわりに、アルバイトが多い。人を雇っても営業して行けるのであるから、羨ましい限りである。
 本棚の前でパチパチと携帯をいじっては、次の棚へと移動して行くひとりの大学生風の男がいた。そう、この人こそ噂に聞く携帯セドラーなのであり、私ははじめて携帯セドラーを目撃したのである。おそらくは、携帯サイトか何かで、アマゾンあたりに出品されている本の相場を調べて、値の張るものだけを買うのだろう。なんという合理的な仕入れ方であろうか。しかし、私はプロであり、そのような文明の利器を使わなくとも、本の目利きはできるのである。私の眼が血走っていたこともあり、携帯セドラーも意識してチラチラと私の方を見るが、相手は素人であり、ここは負けてはならない。
 私は一番上の棚から目を走らせる。私は本の題名若しくは、作者だけで本の相場がわかるのであり、一瞬にして一段目の棚を見終わる。そして次々と本を見て行く。それに対して携帯セドラーは、気になった本ひとつひとつを携帯で調べているので、時間がかかる。いい本を買うのは早いもの勝ちであり、プロを舐めてはいけないのである。
 私はあっという間に本をチェックしたが、どうやらこの店は既に漁られていたらしく、一冊も私が欲しいと思う本はなかった。私が威風堂々と店を出るとき、携帯セドラーは、未だに本棚の前で携帯をいじくっていたが、彼の手にも一冊も本はなかったようであった。