古本に挟まっているもの

 古本のページをめくると、なにかが挟まっていることがある。ほとんどが栞の代用として挟まっているのだが、航空券の半券であったり、美術館の入場券の半券であったりする。航空券を見ると、羽田〜那覇の半券であり、以前の持ち主はこの本を飛行機の中で読んでいたのだろう。もしかしたら、新婚旅行で行った記念のものかも知れないなどと想像したり、自分も沖縄へ行ってみたいと思ったりする。
 以前、買取った本をながめていると、一枚の写真が挟まっていたことがある。古い白黒の写真で、二十代ぐらいの年齢の男の人が、海軍の制服を着て写っているものだった。その表情を見ていると、とてもおだやかそうな人柄だと不思議に想像できた。大切なものだろうから、すぐに売主へその写真を送った。すると、お礼の返信が届き、売主の父上が出征する際の大切な写真とのことだった。
 その他にも、恋文が挟まっていたこともある。送りたくても躊躇し、いつの間にか忘れてしまったのだろうか。それとも、想っている人と本の交換などをしていて、恋文を渡す方法として、さり気なく恋文を本に挟んだのが気付かれずに終わってしまったのだろうか、などと想像が膨らんでしまう。
 古本に挟まっているものには、栞としての機能だけではなく、それぞれの想い出が挟まっている。今日ひらく本には何が挟まっているのだろうか。