想像力について

 新聞を読んでいると、最近は昔では考えられない犯罪が目に付いて仕方がない。身近なところで見ていると、小さなところでのモラルの欠如も目立つ。例えば電車の中で騒ぐ人間や、老人に席を譲らない人間、成人式での悪態など列挙していたらきりがない。どれもこれも、相手の立場に立脚して物事を考えていないのであり、相手の痛みや思いを考えていないのである。明らかに想像力の欠如である。
 恋愛を例にしてもそうである。好きだ嫌いだなどというものは、そもそも口に出して言うものではない。相手の仕草や雰囲気、目を見て察するものであり、相手の思いはそこから想像できるはずなのである。ところが最近は、そのような微妙なものを察して想像できる人間が少なくなった。その為か、「好きだ」などと告白し、さらには相手が自分のことをどう思っているのかを確認してからしかお付き合いがスタートしない。最初に結果を出してからスタートするなど、おもしろくも何ともないのである。
 昨今は想像力が欠如している人間が増加したとしか思えないのである。犯罪やモラルの問題などは、相手がどう思うかを少し考えれば起こらない問題なのであり、大多数は想像力の欠如に起因しているのである。現代人は受動的にしか見ることのできないテレビより、能動的であり、しかも想像力を醸成する書物を積極的に読むべきなのである。